白内障という病気を理解するために、まず眼球の構造について説明しましょう。
眼球はカメラと同じような構造をしています。一番前側には、角膜といって透明なガラスの役割をするものがあります。この角膜はだいたい直径11mm程度で、厚さは0.7mm程度です。その角膜の奥には茶色の虹彩があり、この虹彩は瞳孔(瞳)の大きさを調節し、眼球内に入る光の量を加減しています。瞳孔のすぐ奥には水晶体と呼ばれるレンズがあります。このレンズは、瞳の中に入ってきた光を屈折させて、ピントを合わせます。水晶体で屈折された光は硝子体を通過して眼底の網膜に達します。網膜はカメラのフィルムの働きをするところで、ここにピントのあった質のよい光があたることが「良く見える」ための条件なのです。
白内障は、水晶体に濁りが発生し、透明度が落ちている状態をいいます。水晶体が濁っていると、眼底の網膜に良質の光が届かないために、霞んで見えたり、視力が落ちたりするのです。白内障の原因として一番多いのは、加齢現象として発生する老人性白内障です。老人性白内障は、60歳代の人の60%に、70歳代の人の80%に発生していると言われています。それ以外に目のけがで起こってくる外傷性白内障、糖尿病により引き起こされる糖尿病白内障、アトピー性皮膚炎に合併するアトピー性白内障などがあります。白内障の原因が違っても、水晶体が濁っているという状況はどの白内障も同じです。
白内障になったらどうすれば良いのでしょうか。白内障に対しては、二つの治療法があります。一つは点眼薬による治療で、もう一つは、手術による治療です。
点眼薬の治療は、水晶体の分子構造中の蛋白質や糖質の酸化を防ぐことにより、白内障の進行を予防しようというものです。まだ視力に影響していない軽い白内障の場合にこの点眼薬の治療が良いでしょう。しかし、点眼薬を使用しても、完全に進行は止められませんから、定期的な眼の検査は必要です。
一方、白内障が進行して視力に影響が出ている場合、点眼薬で治療を行っても視力が回復することは難しいので、手術によって視力を回復させることをお勧めします。糖尿病性やアトピー性など原疾患のために二次的に発生している白内障は老人性の白内障に比べ進行が早いようですから、手術を受けた方が良いことが多いようです。
この20-30年で、白内障の手術はとてつもなく変化し発展しました。以前、白内障手術は見えなくなってから受ける手術という概念がありましたが、それは昔の話。今は霞のない良質な見え方を得るための手術に変わりました。今の白内障手術(みやた眼科の手術)について、御紹介いたしましょう。
まず、麻酔の方法ですが、以前は目の周りや耳の前に大きな注射をされましたが、今はこの注射は必要なくなりました。点眼薬による麻酔を十分効かせた上で、白目(結膜)の中に麻酔液を注入すると、手術中の痛みは全くなくなります。
白内障の除去は、超音波装置を使って行います。この超音波装置は、2-3mmの傷口(切開創)から、白内障を超音波で砕きながら吸い取るものです。この方法でほとんどどんな白内障でも除去できますが、極端に進行した重度の白内障には、使用できないことがあります。白内障を吸い終わったら、さらに眼内レンズを眼内に移植します。眼内レンズは、通常直径6.0mmのレンズを移植しますが、最近の新しいレンズは軟らかい材質で出来ているので、レンズを二つに折り畳んで入れ、眼内で広げます。こうすれば切開創を6.0mmに拡大することなく6.0mmのレンズを眼内に移植できます。
切開する位置は、ふつう黒めの耳側(耳側角膜切開)に行いますが、患者さんの目の乱視の具合によって切開する位置を上方にしたり、斜め上方にしたりします。切開の位置を調整することで、手術で新たな乱視が発生しないように工夫します。このような、2-3mm程度の小さな切開創から白内障手術を行う手術を「小切開白内障手術」といいます。この術式は、切開創を縫合する必要がなく、また、術後の炎症が軽くて済むために、入院を必要としない「日帰り手術」がより安全に行えるようになりました。
多焦点眼内レンズによる白内障手術
白内障手術では、もともと眼の中にある濁った水晶体を取り出し、その代わりに人工のレンズ(眼内レンズ)を入れます。眼内レンズは単焦点レンズが主流です。単焦点レンズとは、ピントが一カ所にしか合わないレンズで、遠くが見えるように度数を設定すれば近くは見えず、近くが見えるように設定すれば遠くは見えません。そのため、大抵の場合には手術後にメガネを必要としていました。しかし近年、遠近両用の多焦点眼内レンズというものが発売されました。多焦点眼内レンズを使用すれば、多くの場合、メガネを使用することなく遠くも近くも見ることが出来ます。
選定療養制度を利用して多焦点眼内レンズを選択できます。
保険適応の白内障手術に、多焦点眼内レンズを選択することで増える費用のみ追加負担すれば、保険適応の治療と保険適応外の治療を併用できる制度です。
※2020年4月から多焦点眼内レンズによる手術は先進医療枠から選定療養枠へ変更されました
>>詳しくは厚生労働省ホームページをご覧ください
Q. 「早くに白内障の手術を受けると、また白内障になってしまう?」
「白内障手術は、一度手術を受けるともう二度と手術できない?」
A. 白内障の手術で、水晶体を取って眼内レンズに入れ替えます。この眼内レンズはプラスチック樹脂製で半永久的に大丈夫ですから、二度と同じ白内障になることはありません。また不幸にして、白内障以外の目の病気によって再度手術が必要な状況になったとしても、その手術を受けることはできますから大丈夫です。
◇単焦点レンズ◇
・テクニス オプティブルー:ZCB00V(DCB00V)/Johnson&Johnson社
・テクニス Eyhance
・ネックスアクリエイエイワンピース(AktisSP)(SZ-1)/NIDEK社
◇単焦点乱視用◇
・クラレオントーリック:CNW0T3-9/Alcon社
ZCW150,225,300,375/Johnson&Johnson社
◇遠近/焦点深度拡張(乱視含む)◇
Alcon社
・アクリソフiQ PanOptix Trifocal:TFNT00
・アクリソフiQ PanOptix Trifocal トーリック:TFNT30-60
Johnson & Johnson(AMO)社
・テクニスシナジーTecnis Synergy Simplicity:DFR00V
・テクニスシナジートーリックⅡ Simplicity Tecnis Synergy ToricⅡ:DFW150-375