「ドライアイ」って知っていますか?これは、涙が少なくなる病気のことです。
今日本に2000万人以上のドライアイ患者さんがいると推測されています。いったいドライアイってどんな病気なのでしょうか。また、涙が少なくなると何故困るのでしょうか。
そもそも涙は、涙腺で作られます。涙腺は、上まぶたのやや耳側にあり、そこから分泌される涙は、まばたきの度に、黒目と白目の表面を潤し、表面のバイ菌やゴミを排除し、また黒目に栄養を与えるのが仕事です。この涙が何かの理由で少なくなると、目が乾きやすくなり、黒目に傷が出来てしまいます。目が充血しやすくなったり、疲れやすく、ゴロゴロしたり、目のしつこい不快感に悩まされます。黒目の傷が多くなると、視力も低下してきます。また、コンタクトの入れ心地が悪かったり、コンタクトレンズで目に傷がつきやすかったりもします。
現在、ドライアイは単一の原因により起こるものではなく、いろいろな原因からなる症候群だと考えられています。しかし根本的な原因は未だ判っていません。ただ、どんな人がドライアイになりやすいかは判ってきています。全身的疾患として、慢性関節リュウマチやシェーグレン症候群があります。シェーグレン症候群は、涙を分泌している涙腺が徐々に破壊されて涙の分泌量が減少する病気で、涙腺だけでなく唾液腺も破壊されるので唾液の分泌も低下し、口の中が乾く病気です。VDT作業は、コンピューター画面を見ている仕事で、画面をいつもじっと見ているために、瞬きが極端に少なくなってドライアイになると考えられています。ドライアイの診断は簡単です。
涙腺で産生された涙液は眼の表面を一様に潤したあと約10%は蒸発し、残って古くなった涙液は眼の鼻側にある小さな穴「涙点」を通り、そこから眼と鼻をつなぐ「涙小管」から「涙嚢」「鼻涙管」を経て、「鼻腔」へ流れます。
第1位:目が疲れる
第2位:目の不快感
第3位:目がゴロゴロする
第4位:目がかすむ
第5位:光が眩しい
1.瞬きが浅い人
2.VDT作業者(VDT:Visual display terminal=コンピューターディスプレイ作業)
3.睡眠不足・ストレス
4.空気の乾燥
5.薬物(風邪薬・睡眠薬・精神安定剤など)
6.全身的疾患(リュウマチ・シェーグレン・アトピーなど)
涙の主成分は水で、この涙はいつも目が乾かないように、瞬きのたびに少量分泌されて目の表面をうっすら濡らしてくれています。普通瞬きと瞬きの間は4~5秒ありますから、この間は目の表面が一様に濡れている必要があります。しかし重力で涙は下へ下がってしまうので、涙は一様に目の表面に付着しやすくなるためにムチンという物質(粘液)が目の表面と涙の間に存在し、涙が接着しやすくなっています。このムチンが少ないと、目が涙を弾いてしまうため、涙がすぐ下へ下がって表面からなくなってしまいます。
またこれとは別に、目の表面から涙が蒸発するのを防ぐために涙の最表層には油層が形成されています。この油層分は睫毛の付け根に並ぶマイボーム腺という穴から分泌されており、この油層が少ないと涙の蒸発量が多くなり、目が乾くようになります。
つまり涙は単なる水成分ばかりでなく、表層から、油層・水層・ムチン層の3層からなっているわけです。この油層やムチン層が充分でない時に"質の悪い涙"ということになります。
このような涙の異常をふまえて、ドライアイは二つに分類されます。
涙液現象(水分欠乏)型と蒸発亢進(油分欠乏)型です。
涙液減少型ドライアイは、涙の分泌量が少ないタイプで、シルマーテストを行うことで診断がつきます。シルマーテストとは、下まぶたのの中に小さな短冊状の濾紙を挟み、その濾紙にしみてくる涙の量で、涙液分泌量を測定するというものです。5分程度で測定できます。
一方の蒸発亢進型ドライアイは、シルマーテストで涙液量は正常であるにもかかわらずドライアイになっているタイプで。この原因は、マイボーム腺の機能不全で油層が薄くなっている場合や、結膜炎後のムチン不足で涙の乗りが悪い、つまり"涙の質が悪い"場合、または不完全な瞬きや、コンタクトレンズの使用などが挙げられます。
マイボーム腺の機能不全は、加齢や雑菌の感染により起こります。若い女の子が"アイプチ"で無理な二重を作り、不完全な瞬きでドライアイになっていることがありますが、これも蒸発亢進型の一つと言うことになります。
ドライアイの根本的治療は、涙の分泌量を増やすことですが、現在のところこのような効果を持つ薬は、ありません。したがって、軽いドライアイの場合は、涙を補充する目的で、人口涙液の目薬を頻回に点眼してもらいます。この時、防腐剤の入っていない目薬であればより効果的です。乾燥が強い人は、人口涙液に加えて、ヒアルロン酸の点眼液や、眼軟膏も使用します。また、最近はムチン(*)とドライアイとの関係から開発されたムチンを増やす目薬も処方しています。(*ムチンは、涙液の主成分である水分を角膜に均一に定着させています。)
非常に重症の場合は、目頭にある涙の排水口である涙点をプラグで塞いでしまう方法もります。これを塞げば。涙を長く目の中に残すことができます。目薬での治療でも症状がとれないような重度のドライアイの方には良い効果が得られます。
涙点プラグは時々落ちてなくなることがあるので、手術的に涙点を縫合して閉じてしまう方法です。より確実な治療効果が期待出来る反面、後戻りできない欠点もあります。手術自体は簡単ですぐ終わります。
いずれにしても、病状に合わせて、治療法を工夫しなければなりません。また、医学的治療の一方で、日頃から瞬きの回数を多くするように心がけることと、空気の乾燥には十分な配慮が必要です。
症状で思い当たる方は一度検査を受けてみてはどうでしょうか?